【魔性の子】 小野不由美
魔性の子 読了しました。
初めての小野不由美さんの作品です。



教育実習のため母校に戻った広瀬は、教室で孤立している不思議な生徒・高里を知る。彼をいじめた者は“報復”ともいえる不慮の事故に遭うので、“高里は崇る”と恐れられているのだ。広瀬は彼をかばおうとするが、次々に凄惨な事件が起こり始めた。幼少の頃に高里が体験した“神隠し”が原因らしいのだが…。彼の周りに現れる白い手は?彼の本当の居場所は何拠なのだろうか?(「BOOK」データベースより)


えっと、この「魔性の子」という作品は
「十二国記」というシリーズ物のサイドストーリーにあたるようですが、
本編の「十二国記」は未読です。
そのため、今から書く感想は「十二国記」を読まれた方には
とんちんかんで、全くの的外れな内容かもしれませんので、
その点、先にお断りしておきます。


どの辺からがネタバレになるのかよくわからないので、
とりあえずここで折りたたみます。未読の方はご注意を。


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本を買う前にちょろっと下調べしたところ、ホラーだと聞いていたので、
チキンな私はおっかなびっくりで読んでいたのですが、
意外とそのへんは大丈夫でした。
これなら「屍鬼」も読めるかな。もっと怖いかなぁ。

物語が進むにつれ、“報復”はエスカレートしていき、
集団飛び降り自殺のシーンなど、ゾッとするような場面もありますが、
残酷描写としてはそれほど気にならない程度。
(その直前に、書店で我孫子武丸の「殺戮にいたる病」を立ち読みしていたからかも。
 …あれは斜め読みじゃないとキツい。)

惨い描写よりも、ホラー場面よりも、
私が読んでて辛かったのが、マスコミが高里を執拗に責めるくだり。

同級生達が高里を避けたり、攻撃的になったり、
そうかと思えばすり寄ってきたり…といった行動は
どこまでも孤独な高里に同情はしますが、
”こちら側の人間”としては、当然の反応だと思うんですよね。
岩木や生田先生みたいな対応ができるのは
ある意味では特殊で、人間が出来ているのだと思います。
高里の家族にしても、憤りは一瞬感じたものの、何年もあんな目に遭っていれば、
そんな風になってしまっても不思議じゃない。

けれど、マスコミや通りすがりの野次馬達は違う。
高里に怯えてる訳でもなければ、憤ってる訳でもない。
好奇心だけを剥き出しにして、正義を振りかざして、ただ攻撃の対象にする。
マスコミにすれば特ダネが取れればそれで良いのだろうし、
野次馬達は日ごろのフラストレーションを晴らす、絶好の機会という訳で。
現実社会でも、そう感じることが多々あるので、
妙にリアルで、ここが私には何より怖かった。
家の周りをどんどん包囲していく、マスコミや野次馬の描写に
読んでる私まで息苦しくなり、遂にはアパートに石が投げ込まれ、
ユニットバスで二人縮こまっている場面では
もうやめて~!と泣きたくなってしまった。
このあたりが読んでて一番しんどかったです。


本当にこの世のものでなかった高里と違い、
広瀬の故国喪失感が現実逃避であることは
後藤先生にも指摘されたこともあって、本人もわかっていたことだと思う。
それがエゴであることもちゃんと知っていて、それでもなりふり構わず、
高里を引き留め続ける広瀬が悲しい。

でも、こういう風に考えてしまうことって、
広瀬に限らず、割と誰にでもあることじゃないのかな。
「自分はこの世界のものではないんじゃないか?」とまでは思ったことはないけど、
「なんでこの世に生まれてきてしまったんだろう?」とは
私も何度も思ったことがあるので。
幼少期の臨死体験のせいで、そのへんに折り合いをつけられなかったのが
広瀬だったんだろうなと思った。
その後、現実を受け止められたのか心配ですが、
後藤先生もいるし、無事立ち直っていることを祈りたいです。
(というか後藤先生や十時先生は無事かなぁ。)


さらっと読み返してみて、ひとつ気になるのが、
この凄惨な出来事を巻き起こしたきっかけは、
他ならぬ広瀬自身だったのではないかということ。
高里に興味を持った広瀬が、化学準備室で彼の話題を出したことで、
築城と橋上が怪我をした。
そのことがきっかけで、好意で高里に渇を入れた岩木が死んだ。
そのことが集団自殺を招き・・・。
「向こう側の世界」からお迎えが来るのは、
もしかすると時間の問題だったのかもしれないけど、
学校や地域をこうまで恐慌に陥れるきっかけは
不幸にも広瀬が作ってしまったのかもしれない、と考えると
なんて皮肉な話だろうと思う。


「向こう側」の世界を全く知らない私には、
麒麟や白汕子や傲濫といったものの存在や、
迎えに来たのが泰王ではなく、なぜ延王なのか?など、疑問もたくさんありますが、
それでも、この作品単独でも十分楽しめました。
欲をいえば、岩木や生田先生といった、
高里を想って死んでいった人たちへの救いは欲しかった気はする。
それを言うのは野暮というものだろうけども。

シリーズ物じゃなければ、オチが納得できないと感じるかもしれないけれど、
ファンタジーと繋がっていると知っていたので、特には気になりません。
意味がわからないからこその気味の悪さというのもありますし。

他の作品も読めば、リンクできてさらに楽しめるんだろうなぁ。
泰麒が向こうの世界では一体どういう立ち位置なのか、気になるところ。


・・・ちなみにこれ、ティーン向け作品…ではないですよね。
「終了」とか「確認」のような簡単な単語まで丁寧にルビがふってあったので。
おかげ最初に想像していたより、かなり読みやすかったです。

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この記事のコメント
わわ!!読んだんだね。

ホラー要素は大丈夫そうだったけど、お勧めするほど
面白かったかな~?って不安はあるよ。
面白いよ~って言うならぜひ十二国記も読んで欲しいな^^

い、言いた~~い。
なぜ延王なのか、麒麟の事やら傲濫のこと!!
これにはちゃんとエピソードもあって…モゴモゴ

十二国記の中で、延王とその相方(言えないのよ~)が一番好きなんだよ~(≧∇≦)キャー♪

>きっかけは、他ならぬ広瀬自身
ってのはまったく以て、同意見。
そのままにしててもそのうち延王来たな~。って思ってしまう。
でも、高里にとっては、広瀬と出会えたことは
救いだったんではないかな。
そして、もちろん広瀬にとっても。

ゼヒゼヒ立ち直って欲しいな。
後藤先生と十時先生の無事を祈りつつ。
2011-11-12 Sat 19:20 | URL | ミュシャ #- [内容変更]
この時間に一人で拝見していたら。。。
ダメ。ダメ。
怖いよ~。集団自殺(*_*;
ちびりそうです~。ごめんなさ~い。途中でリタイヤしました(泣)
太陽のある昼間、音楽聞きながら、チョコ食べながら、再チャレンジします~。
今晩、寝れるかな???
お風呂も入れないわ。
このまま子どものベットにもぐりこみます。
2011-11-13 Sun 00:03 | URL | tsubaki* #- [内容変更]
>ミュシャさん
はい、面白かったです♪
確かに単発作品だったら、そこまで高く評価はできないかもですが、
これ一冊でも十分楽しめましたよ~
きっと読めば読むほど、リンクして面白いんだろうなぁと思って^^

ふふ、黙っててくださってありがとうございます♪
積読本が多い上遅読なので(汗)、すぐには読めなさそうですが、
いつか絶対「十二国記」も読みますね!

>高里にとっては、広瀬と出会えたことは
救いだったんではないかな。
そして、もちろん広瀬にとっても。

本当ですね。
客観的には、どうしても辛いことばかりが見えてしまったけれど、
お互い、唯一の理解者に出会えたんですもんね。
そう考えたら、僅かながらも救いがあるお話だなぁ。
先生二人とも、本当にいい人たちだったから、
高潮に巻き込まれてないことを祈るばかりです。
2011-11-14 Mon 09:32 | URL | こゆりす #- [内容変更]
>tsubaki*さん
あ、未読なら見られない方がいいですよ~^^;
結構ネタバレ満載なので、もしいつか読む機会があったらもったいないですし。
私も怖がりなんでホラーは苦手なんですけど、
これは案外大丈夫でした^^
けど、怖い思いして再チャレンジしていただくほど、
たいしたことは書けてないので。。汗
無事、お風呂に入れましたでしょうか^^;
2011-11-14 Mon 09:44 | URL | こゆりす #- [内容変更]
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