映画「20世紀少年」
金曜ロードショーで3週連続「20世紀少年」が放送されました。

この映画、2章までは別の映画を観に行った時に予告編を見て、
なんか怖そうな映画!と思ったきり忘れていたのですが、
友達が「すごく面白い漫画があるよ~。怖い話じゃないから、読んでみ?」と
大人買いした漫画を一気に貸してくれたのがきっかけ。

友達は怖くないと言ったけれど、映画の予告を見た怖さをそのまま感じつつ
それでも本当に面白くて3日間くらいで全巻読んでしまいました。

漫画を読んだのがちょうど映画第三章の公開中。
聞けば、映画もかなり忠実に作ってあるが、
第三章は漫画とラストが違うと聞いて、
一緒にハマった夫とともにいきなり第三章を観に行ったので、
第一章と第二章の映画は今回初めて見たのでした。


では映画の、というより金曜ロードショーの感想を。

まずこれ、CM込みで2時間~2時間半ってことは
テレビ放送版は端折られてるって理解でいいのかな??
これでもしフルバージョンなら、漫画読者はわかっても、
映画から入った人は全く意味不明だと思うのですが。。

この先、ネタばれがあります
書き始めたら非常に長くなったので折り畳みたいところですが、
調べても方法がよくわからなかったので反転させます。

イチ原作読者としての感想ですので、ご容赦を。。


・第一章「終わりの始まり」
神様とケンヂ達の繋がりが薄く、生きるか死ぬか、という大事な場面で
大事な姪っ子をホームレスのおっちゃんなどに託したのか説明がない。
「お前は大丈夫だ」などと自信満々で言うけど、
神様の予知能力にも触れられてないのに、何のことだかわからないのでは?

そして、オッチョ。
オッチョの忘れたくても忘れられない辛い過去、
タイでの修行や生き様を描かずして、いきなり日本で唐突に登場。
トヨエツだからまだいいけど、オッチョの人間離れした格好良さが半減。
途中まで「ともだち」ではないか、と疑われてたのに
突然の登場にも関わらず、幼馴染達からの疑いがすぐ晴れていることに説明がない。

1章最後の爆発シーン。
・・・ダイナマイトが爆破したのに、あれじゃどう見ても原発。
「ともだち」もろとも街ごと吹き飛んで、話が終わっちゃいます。

冒頭の放送室ジャックするシーンは本当に漫画そのもので、
本当に良く出来てるなぁ…と、ここだけは鳥肌が立ちました。


・第二章「最後の希望」
むむむ・・・だんだん原作とズレてきたような。
もちろん漫画の長さからいっても、忠実に作るのは不可能だし、
大筋や結果では同じなんだけども、肝心なところが違う。

ともだちランドに行かされ、騒ぎに巻き込まれてしまったカンナの同級生、小泉。
原作では小泉が一人で行って、ヨシツネに助けてもらうのだけど、
映画ではなぜかカンナが同行。
神の子であるカンナにともだちランド行きを許可するのも不自然だし、
ましてやともだちランドで成績優秀だったからといって
心が壊れてしまうリスクを伴う”ともだちワールド”に行かせるのも、
「ともだち」の心理からいっても考えられません。

何より納得できなかったのが、サダキヨの扱い。
軽い。軽すぎる!
「ともだち」に一番近い存在にも関わらず、
登場するなり、ともだち博物館であっさり焼死。
単にモンちゃんメモを渡すだけの存在になってしまってました。
サダキヨは子ども時代から存在感が薄く、同級生から顔も知られていない中
「ともだち」に利用された人。
”自分は誰にも覚えてもらっていない”という思いを長年抱えながら、
モンちゃんや恩師の関口先生に出会って、自分の存在を確認し、
最後に自分が正しいと思うことをするサダキヨ。
確かに登場人物が多くて、全員出すのは難しいとは思うけれど、
サダキヨの心を動かす関口先生は出してほしかったな、と思います。
関口先生が存在しない以上、ともだち博物館で終わりにするしかなかったのだろうけど、
サダキヨの登場の不気味さ以外に、ずっと抱えてきた悲しい気持ちや
心が動いていく様を描いてほしかった。

それから、『いちどしんでよみがえるだろう』と予言されていた「ともだち」の蘇りシーン。
原作では、理科室で殺された後、来日したローマ法王の目の前で蘇った「ともだち」。
映画では「ともだち」を殺すために来た同級生に撃たれて死亡。
世界中が英雄である「ともだち」の死を心から悲しみ、
哀悼を捧げるのですが、彼がここまで全世界から敬われるのも
ローマ法王の存在あってのことではないかと。
なんか大事なところが違ってきて、原作読者としてはイライラしてきた第二章でした。
時間の関係上、物語で重要な意味をもつ『首吊り坂』の事件が端折られてるのも残念。

だいたい、原作を知ってるからこれでも話もわかるけど、
映画から観た人はこんな説得力がないストーリーで付いていけるのだろうか?
原作と話を変えるのなら、一人ひとりの登場人物を丁寧に扱ってほしかったなと思います。


・第三章「ぼくらの旗」
およ?テレビ(DVD)では映画のエピローグにいくつかシーンが加えられてたんですね。
付け加えられた内容は原作に沿ったもの。
加えられてよかったかな、と思います。
第三章は映画館ですでに観てて、新たに思うこともないので、当時感じた点を。

原作とは違う結末を、というのがウリだったはずなのですが、
「ともだち」の正体は誰か、という点に関しては同じで、
「○○君だろ?」と曖昧だった最後をはっきりさせた程度です。

だけど・・作者も言ってる通り、私もこの話の見所は
「ともだち」が誰か、ということではないのだと思う。
原作でも「ともだち」の正体に焦点がいってしまったせいで
結末に読者は「なんでその人が??」と感じた人が多く、
これは作者の描き方にもう一工夫欲しかったところではあるけど、
映画では「ともだち」の正体当てだけをクローズアップさせてしまっている。

この場合、「ともだち」の正体や名前は田中くんでも鈴木くんでも誰でもよいのだ。
忘れられてしまったその存在は、誰でも「ともだち」になりえる。
「ともだち」を作り出したのも、ごく普通の子ども。
そして、典型的ないじめっ子だったヤン坊マー坊の発言
…「子どものときはあんなに仲良く遊んでたじゃないか」で象徴されるように
イジメた側は大して罪の意識はなく、時間とともに簡単に忘れてしまう。
イジメられた方はずっと忘れることができない。
それがこの壮大な話の本質なのだと思います。

原作と決定的に違うのは「ともだち」が一人だったこと。
映画という限られた時間で二人存在したことにすると、複雑すぎるし、
収拾がつかなくなるからなのでしょう。
ですが、一人にしたことで、原作読者としては揚げ足取りのように疑問が浮かぶ。。

原作では、ハットリ君のお面を被っていたのは一人目の「ともだち」だったからこそで、
映画の展開なら、途中で被り物を変えた理由がみつからない。

二人目の「ともだち」がカンナの父親じゃなかったからこそ、
カンナに”絶交”を言い渡せたはず。
一人目の「ともだち」の思考は普通ではなかったけれど、
父親としての愛情は人並みにあったのです。

「ともだち」が大阪万博開催中にサダキヨのお面をつけていた理由はわかるけど、
ヨシツネがお面をかぶる理由が全く見当たらない。
どういうわけだか自主的にお面をかぶって、
「ともだち」の気持ちがわかる人間としてスケープゴートに仕立てあげられたことも、
原作であれほど奮闘していたヨシツネを見ればありえないことで、なんだかなぁ…でした。

そして、ラストのケンヂの唄。
いい唄だと思うけど、ケンヂが「ともだち」に対して罪悪感を感じている中
大衆の前ではあえて歌わない方がやっぱり良かった。
主人公が歌うシーンでラストを締めた方が
映画としてはきれいにまとまるのだろうけど、歌は別のところで流して、
あそこではやはり歌えないケンヂでいてほしかったなぁと思いました。


漫画は24巻と長いのですが、映画から見て興味をもたれた方は
原作も読むと尚面白いのではと思います。
中盤、中だるみしてると感じた部分もありますが、
1960年代と現在を、大人になった仲間の記憶を元に
交互に行き来させ、少しずつ迫っていく展開は本当に素晴らしいものがあります。
映画では(特に後半)話の筋を追うのに必死になって、
60年代の記憶という重要な道具をおざなりにしてしまっていて、
映画では端折られていた首吊り坂の事件など、
ゾッとするけど、重要なエピソードをぜひ読んでほしいなぁと思います。

と、原作を知ってるせいで、終始ツッコミだらけになってしまいましたが、
唯一良かったのは「スーダララ、グータララ」を作ったのが「ともだち」だったというラスト。
あそこだけは、原作の完敗かもしれません。



・・・いかにも怖そうな映画の宣伝でしたが、正直ちっとも怖くないです。
ホラーではないけど、「ともだち」のカリスマ性と独特の怖さ、不気味さは
漫画の方が何百倍も味わえました。

こういう長い連載漫画だと後からエピソードが足されていって
矛盾点もどんどん出てくる場合が多いのに、
1巻冒頭のシーンが伏線として生きていて、
24巻の最後にそうだったのか、と鳥肌が立ったものでした。
これだけ最初の時点がプロットがしっかりしてる漫画ってなかなかないように思います。
現在⇔小学生時代の記憶との間を絶えず行き来して描かれるのですが、
これが本当にうまい!
万博世代の方なら、特に懐かしいものを感じるのではないでしょうか。
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