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『屍鬼』 小野不由美

こゆりす

    
人口わずか千三百、三方を尾根に囲まれ、未だ古い因習と同衾する外場村。猛暑に襲われた夏、悲劇は唐突に幕を開けた。山深い集落で発見された三体の腐乱死体。周りには無数の肉片が、まるで獣が蹂躪したかのように散乱していた―。闇夜をついて越して来た謎の家族は、連続する不審死とどう関わっているのか。殺人か、未知の疫病か、それとも…。超弩級の恐怖が夜の帳を侵食し始めた。 (「BOOK」データベースより)



「十二国記」と並んだ小野不由美さんの代表作であるホラー。
気になりつつも怖がりなのでしばらく手を出せませんでした。
5年ほど前にアニメで視聴し、
その記憶がいい感じに薄れたところで原作に挑みました。

古い因習が残る村、外場村。
村独特の伝統行事、土葬の習慣…。
ある日三体の腐乱死体が発見され、徐々に異変が村を蝕び始める。

大まかなストーリー展開がわかっていても、これは面白い!!
文庫で5冊という大作で、登場人物もものすごーく多いのですが、
最初の一冊を乗り越えたら止まらなくなること間違いなし。
人がいっぱい死ぬ話ではあるのですが、
ホラー苦手な私でも大丈夫でした。

驚くべきは、150人を超えるという登場人物たち。
普通多くても数十人といったところなのに、
名前が出ているだけでなく、
個々がちゃんと描かれているのが凄すぎる!


この物語では、主役級の二人で派閥が分かれるようで。
ぶっきらぼうで暴走するところもあるが、正義感に熱い医師・敏夫派か、
そんな敏夫の諌め役、温厚で争いを好まない坊主・静心派か。
私は断然敏夫派。
優柔不断なくせに、敏夫だけに理想論をふっかけてくる静心に
大いに苛々させられたから^^;
あと、ちょいちょい挟まれる静心の小説が禅問答のようで
私には読みづらかったというのもあります(これは私の問題)。
ちなみに、苛々ランキング二位は沙子です。
結局あのコンビが苦手だったんだなー。
敏夫派ではありますが、一番好きなのは夏野とりっちゃんですw

こちら文句のつけどころもなく満点なのですが、
欲を言えば、各巻に主要な人だけでいいので登場人物表と、
村の地図をのせてほしい。
本の中でも方向音痴を発揮して、
場所の位置関係を掴むのには苦労しました^^;


ここからネタバレ感想のため、反転します↓

ところで、4巻以降は屍鬼側の描写が増え、
屍鬼といえども、生ける屍のゾンビではない。
生きていた頃の記憶がなくなった訳ではなく、
普通の人間と同じ、感情に支配される生き物であることがわかります。
ただ、人間と同じ食糧では生きていけないというだけ…。

屍鬼に感情移入される方が多いようですが、私はというと最後まで人間派でした。
襲われて屍鬼にされた人々は本当に気の毒だったのですが・・・
その元凶は辰巳と沙子。

ただ単に「生きるために人を襲わねばならない」だけなら、
もっと簡単に割り切ることのできた者もいたでしょう。
辰巳があえて身内や親しい者を襲わせる、という嫌がらせをしたために
徹ちゃんみたいに自分の存在に苦しみながら生きねばならない起き上がりがいた訳で。

沙子の制裁や辰巳の嫌がらせがあったからこそ
一人ひとりを見れば哀れな生き物だと思いながらも、
どうしても屍鬼側に肩入れすることができませんでした。

そして、夏野と昭・・・
アニメと全く違う最期が本当にショックでした。
二人ともあんなに頑張ったのに、
事態を早期に理解して、頑張ったからといって
生き残れる訳じゃないという救いのない現実に打ちのめされます。



同じ境遇に遭ったときに、
ただただ怯えて言いなりになる者、自分を律することができる者、
元々の凶暴性を発揮する者、人に媚びつつも出し抜くことだけを考える者・・・

人間の描き分けが上手すぎて、本性を抉り出されるようで胸がぞわぞわします。
十二国記といい、こんな壮大な物語を書ける小野さんに慄かざるを得ません。


来年こそは十二国記の新作が出るかも?
十二国記通信-麒麟便り-
小野さんのご体調が早く良くなることをお祈りしています。


★★★★★


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Posted byこゆりす

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